【レポート】「福井7人の工芸侍」と交流
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有田焼創業400年プロジェクト 伝統工芸, 伝統工芸産地人的交流事業
前回の秋田・川連に引き続き、今回は福井県の国指定伝統的工芸品産地の方々との交流レポートです。
現在、福井県には7つの伝統工芸品がありますが、その有志グループ「福井7人の工芸侍」の方々と交流。7品目ありますので駆け足で周らせて頂きましたが、時間の無い中でも皆様には詳しくご説明いただき大変勉強になりました。
まずは7人の工芸侍の発起人である、熊本さんにお会いするため、鯖江の眼鏡資材商社キッソオさんに伺いました。眼鏡といえば鯖江という程、全国的な知名度を誇る有名な産地ですが、なんと国内シェア約9割なんだそう!(国内にライバルはいないとの事)
キッソオさんは眼鏡メーカーにフレーム用の資材を供給する傍ら、その資材を利用して様々なアイテムを製造されています。それらのアイテムのブランディングやプロデュースを熊本さんが担当されており、そのノウハウを生かして「福井7人の工芸侍」とともに活動されています。
左)熊本さんがプロデュースするフレーム素材を利用した「耳かき」
右)フレームの原料「セルロースアセテート」の板
鯖江の歴史や工芸侍発足の経緯など伺ったところで移動。福井県は東西でかなりの距離があり、2日目には小松空港に戻らなければならないので、初日は西側の小浜へ向かいました。
若狭めのう侍
初めに若狭めのう細工侍・上西さんの「宗助工房」へお邪魔しました。美しい緑や赤の細工品や、めのうの原石などを見せて頂き、上西さんに実際の作業実演もしていただきました。原料のめのうは以前は北海道産、現在はブラジル産が多いとの事。現在職人さんが上西さんとそのお師匠さんの二人だけでかなり深刻な状況。また原料のめのう自体も不足しており、これまで伺った他の産地と比べても危機的状況にあると感じました。
左)めのうの原石 右)上西さん実演
若狭塗侍
次に若狭塗侍・加福さんの工房兼店舗「加福漆器店」へ。若狭塗は下地に様々な色を塗り重ね、それを研磨することで色や模様を出す「研ぎ出し」技法が特徴的な産地。加福さんにもお箸の研ぎ出し作業を見せていただきました。加福さんは製造と販売両方を営まれており、同様の業態は全部で4件しかないとの事。こちらも産業として厳しい現状があります。
左)若狭塗の塗工程 右)加福さん実演
越前箪笥侍
初日最後は福井県の北東部へ戻り、越前箪笥侍の山口さんの工房「ファニチャーホリック」へ伺いました。釘を使わず気密性のよい越前箪笥ですが、飾り金具も特徴的でこの金具を専門に作る職人さんがおらず、古いものから取り外して再利用することもあるのだとか。山口さんは越前箪笥のキャリーバッグを制作されるなど斬新な取り組みもされていて、今注目の若手職人さんです。
左)金具を取り外した後の箪笥 右)山口さん作のキャリー箪笥
越前焼侍
2日目、まずは越前焼侍・泉さんの工房「踏青舎」へ。基本土ものですが、磁器と陶器の中間の半磁器のような器も制作されていて、土ものの風合いを残しながら薄手かつしっかりと焼き締まった強度のある器でした。同業ですので我々も非常に興味深く、お話もたくさん伺いました。越前焼の組合には問屋機能があり、組合から定期的に発注がくるので製作スケジュールが立てやすいとの事。
左)製作途中の泉さんの器 右)薪窯もお持ちで時々炊くそう
この時の交流の様子を地元紙に掲載していただきました。
越前打刃物侍
次は越前打刃物侍・岩井さんの工房「鍛治工房いわい」を訪問。効率の良い生産のため、人一人がすっぽりと収まるスペースの周りに各作業工程が手の届く範囲に配置されています。「熱さに怯み怖がっていると良い刃物はできない」という言葉に職人魂を感じました。越前打刃物はもともと農耕用の鎌から始まっていて、岩井さんの展示場にも美しい包丁と並んで鎌や鍬、鉈などの農耕具も一緒に展示してありました。
左)全てが効率よくできる配置 右)整然と並べられた美しい刃物
越前和紙侍
この日3つ目、越前和紙侍・柳瀬さんの「RYOZO梁瀬良三製紙所」です。産地で手漉き和紙生産量No.1を自負されている柳瀬さん。現場では阿吽の呼吸で作業が進んでいきます。言葉ではなくお互いがお互いの様子を観察しながら寸分違わぬタイミングで作業が進んでいきます。現状でも十分な受注量があるとの事ですが、さらにここから新しい販売方法やブランディングに着手されているようです。
左)一枚一枚丁寧でありながらスピードも速い 右)息の合った工程
越前漆器侍
福井交流、最後は越前漆器侍・土田さんの「土直漆器」を訪問。有田と同じく業務用漆器で発展してきた越前漆器。現在でも業務用漆器シェア80%を超えるといわれる一大産地です。土直漆器さんでは業務用の他にも一般用のお椀やお箸なども手掛けられており、社内で下地・塗り・蒔絵まで一貫生産できる体制をとってらっしゃいます。
左)展示室には素晴らしい蒔絵の作品がたくさん 右)お箸の漆塗り作業を拝見
土田さんの元を後にする前に、近所にある「越前漆器伝統産業会館」へ寄り道。ここにあるのが越前漆器の技術の粋を凝らした大きな山車。産地の職人さん皆で手分けして作られたものとの事。どこを見ても細部まで丁寧に装飾が施されており、サイズもディティールも圧巻!
これで全交流終了。初日の夜には、侍をサポートする福井の行政の方やデザイナーさんなども交え懇親会。有意義な交流の場となりました。「福井7人の工芸侍」の皆様、お忙しい中ご案内いただき本当にありがとうございました!
その後7月末に皆様を有田へお迎えし交流させていただきました。福珠以外の窯元も他産地へ飛び交流をしており、関係者含め70名超の活発な交流会となりました。この佐賀県の産地間交流事業は来年も継続され、発表の場も設けられる予定ですのでご期待ください!
「福井7人の工芸侍」メンバー
・若狭めのう細工 宗介工房 上西宗一郎 氏
・若狭塗 加福漆器店 加福宗徳 氏
・越前焼 踏青舎 泉直樹 氏
・越前漆器 土直漆器 土田直東 氏
・越前打刃物 鍛治工房いわい 岩井丈 氏
・越前箪笥 ファニチャーホリック 山口祐弘 氏
・越前和紙 RYOZO梁瀬良三製紙所 柳瀬靖博 氏
・7人の工芸侍 発起人 株式会社キッソオ ディレクター 熊本雄馬 氏
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