福珠窯の染付 優しく深みのある青の秘密
福珠窯の染付に使用している「唐呉須」
染付とは素焼きした生地に呉須(ごす)と呼ばれるコバルトを含んだ絵具で絵付けをし、その上に釉薬をかけて焼成した青色だけで仕上げた物を一般的には指します。
福珠窯では唐呉須(とうごす)と呼ばれる通常の呉須よりも鉄分が多めの呉須を使用しています。繊細な絵柄よりも、福珠窯の作風である古染付や初期伊万里の伸びやかでリズムがある筆遣いにとてもよく合います。
絵具の色だけみていると、染付の青とはかなりかけ離れた色をしていますが、焼成すると唐呉須独特の深みのあるブルーに変化します。
福珠窯では古染付や初期伊万里の風合いや肌合いを表現するために土、釉薬などあらゆる素材をひとつひとつ厳選しています。中には高価なものもありますが、素材は私たちのモノづくりの哲学の根幹となる部分です。やはり妥協するわけにはいきません。
唐呉須の良さを引き出す釉薬と土
福珠窯では市販そのままの釉薬を使わず、自社で調合した柞灰釉(いすばいゆ)という釉薬を使用しています。
柞灰釉は江戸時代の古伊万里にもつかわれていた釉薬で、染付の色のやわらかさと、しっとりとした釉肌が特徴。この魅力が現代にも通用すると判断して江戸時代の調合を再現して使っています。
また土に関しても福珠では特にこだわりを持っていて、他の窯元ではほとんど使用されていない通称「赤土」を使用しています。
左:一般的な白い磁土 右:赤土
この赤土は有田で一般的に使用されている白い磁土とは違い、鉄分をより多く含みます。そのため通常の白磁ような真っ白さは得られませんが、それが逆に柔らかさと優しい表情を生み出します。(白さを強調したいときは土も釉薬も変えています。)
赤土や柞灰釉は唐呉須との相性が非常に良く、この組み合わせこそが他にはない福珠窯独自の製品を生み出しています。
唐呉須、柞灰釉、赤土。この3つの素材と焼成過程で一定条件を満たしたときに、福珠独特の風合い肌合いが生まれます。
福珠窯にとって無くてはならない素材たちです。
動画は染付(下絵付)の様子です。福珠窯では初期伊万里の伸びやかな作風を表現するためにリズムよく筆を走らせます。絵付けしている製品は染付伊万里牡丹7寸丸皿です。
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福珠窯の作風ってどんな感じ?
福珠窯の作風は17世紀初頭に有田で焼かれた「初期伊万里」や同時期に中国の景徳鎮で焼かれた「古染付」の